ワンピース考察

「魚人島編」がつまらない理由と改善案【ワンピース】

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「新世界編」以降のエピソードで、特に「つまらない」と酷評されることの多い「魚人島編」。

個人的に大枠のシナリオはかなり好きで、名作になりうる要素を持っていたと思っています。

特に「過去編」が素晴らしく、オトヒメ王妃とフィッシャー・タイガーの信念や行動、生涯の終え方、見せ場のセリフや「タイヨウへ続く道」という表現のセンス、伏線回収の仕方まで、とても質の高い内容にまとまってると思います。

しかしながら、「魚人島編」には重大な欠陥がいくつもあり、それによってストーリー全体がつまらなく思われることになってしまいました。

「魚人島編」の問題点とは、大きく分けて以下の5つです。

  • サンジがただの「鼻血ギャグ要員」と化し、ギャグとシリアスのバランスが崩れて読者が感情移入できなくなる。
  • キャラクターの「セリフ」が「説明文」となり、文字数が激増する。
  • コマにいるキャラ全員にしゃべらせようとするため、吹き出しの占める割合が異常で、絵が窮屈で見づらくなる。

2つ目と3つ目はよく指摘されていますよね。「魚人島編」の連載当時は、私もまだワンピースへの熱量が高かったのでなんとか読めていましたが、今改めて見直すと「このセリフいる?」とツッコミたくなるような蛇足コメントばかりでテンポが悪く、絵も見づらくてストーリーが頭に入ってこないのです。

①サンジの鼻血キャラについて

私がもっとも不要だと思ったのが、サンジの鼻血キャラ設定です。ギャグとして全く面白くないし、「差別」というシリアスなテーマの中に入れるギャグ要素として不適切で、読者の感情移入を阻害する要因にしかなっていません。

↑ このシーン、笑えばいいのか心配すればいいのか本気でわかりませんでした。鼻血の絵をギャグとして描いている以上、読者はギャグとして受け取るわけですが、それに対する他のキャラたちは、不自然なくらい深刻なリアクションをしています。鼻血をギャグで描くなら、周りの反応もギャグにしてもらわないと、読者は感情移入できないですよね。

なんでこんなクソつまらない茶番シーンを入れたんでしょうか。ナミにボコボコにされて歯が折れたルフィに対して、「ルフィやべぇぞ!! 歯が折れちまってる!!!」と深刻な表情でコメントさせているくらい、意味不明でおサムい演出です。

サンジ(人間)が魚人から「輸血」を拒まれる(=差別される)様子を描くために入れた設定というのはわかります。また「差別」という重いテーマだからこそ、あえてギャグ要素を入れて(暗くなり過ぎないように)バランスを取ろうとしたのかもしれません。

しかしこれは完全なる失敗だと言い切れます。

ストーリーの根幹となるテーマに対して「非現実的なギャグ要素」を入れてしまうと、読者は感情移入ができなくなってしまうからです。

ただただ物語を茶番化させ、読者の感情移入を阻害し、サンジの魅力も削ぐだけという誰も得しない設定なのに、なぜ編集者はOKを出したんでしょうか。

ストーリーの根幹となるテーマが初っ端から茶番化しているわけですから、「魚人島編はつまらない」と言われるのも当たり前です。ファンとしてもフォローのしようがありません。

何より、サンジにあんなギャグ設定の鼻血を吹かせる必要など、ストーリー上まったくありませんでした。オトヒメ王妃やフィッシャー・タイガーの過去のエピソードが素晴らしい出来で、十分にシリアスとギャグのバランスが取れているわけですから、魚人と人間のあいだの「血」の争いは、このエピソードに収めるだけで十分。

その上で、

・ルフィがホーディ戦で受けた傷から大量出血し、輸血を求めるものの、

・まだ魚人たちの多くは受け入れられずに困惑してしまう。

・そこに差別心などカケラもないジンベエが登場して「”タイヨウ”へと続く道」を魚人たちに見せる。

という描写を入れればよかった。

まぁ正直なところ、このシーンも、過去にどれだけルフィが出血しても輸血の描写なんてほとんどなかった(肉喰えば治るって言ってた)のに、急にチョッパーが「輸血しないと死んじまうよ!!」とかいって強引にシリアスな展開にしてるのも茶番感がありましたが。。

まぁ輸血の管を「”タイヨウ”へと続く道」と表現するセンスが素晴らしかったので、そこは目をつぶりましょう。

要するに、

・カマバッカ王国での2年間によって、女性への免疫が失われたサンジが、

・美しい人魚たちを前に鼻血で大量出血し、

・輸血がなければ死んでしまう状況に…

なんてギャグとシリアスを強引に混ぜ込んだ茶番設定をきっかけにしなくても、輸血拒否(=差別の実態)については描けますし、むしろ雑音がない分、読者は感情移入しやすく、話のテンポもよくなって読みやすくなったはずなのです。

こういう無駄な要素を、編集者がきちんと指摘して削ってほしいんですよね。。

サンジの鼻血設定、何の役に立ったんですか?? 本当に必要でしたか??

最近はサンジの鼻の穴の膨らませ方も下品なオッサンでしかなく、なんでここまでサンジを貶めてしまうのか不思議でなりません。。

シナリオ自体は、「差別」について深く考えさせられる素晴らしい内容なのに、本筋以外の雑音が多すぎて、ストーリー全体が茶番化してしまっているのが本当に残念です。

「ノア破壊」のクライマックスシーンも、茶番が過ぎる。

魚人島の冒頭から感情移入が阻害されたため、ルフィがノアを破壊するクライマックスのシーンも、茶番感がすごくて感情移入ができませんでした。

たとえばこのシーン。

↑海王類たちは、「わずかに遅れたら島は救えど ノアは完全に破壊されていた…!!」と言ってるんですけども、

↓見てくださいこれ。

どこらへんが「わずかに遅れたら〜完全に破壊されていた」と言えるだけの損傷をしているんでしょうか。。全体の5%くらいしか壊れていないように見えるのは私だけでしょうか?

しかも「そこを壊しても意味ないだろ」ってところばかり壊してますよね。竜骨から破壊しなきゃ、位置を変えながら最後の最後まで殴り続けなきゃいけないじゃないですか。

そもそも、ノアを真上から破壊したところで、同じ質量の残骸が全てそのまま魚人島に落ちるわけですよね? それがなぜ魚人島を救う唯一の方法として選ばれて、みんなが声を上げて応援することになるのか、全く理解できません。全員バカなんですか?

↑ こんな感じでルフィに本気で焦っている顔をさせて、ヤバさを伝えようとしていますが、このシーンをハラハラしながら魚人島の行先を心配して読んだ人っているんでしょうか。

「漫画なんだから、どうせ最後はみんな助かるだろう」という元も子もない推測ではなく、設定が甘すぎて、「このままじゃ魚人島がやばい!!」「ノアを破壊すれば魚人島は助かる!! ルフィ頑張れ!!」という最低限の感情移入ができないんですよ。。こんなのワンピースじゃないよ。。

ルフィが船体を下から馬鹿力で止めて時間を稼ごうとするとか、しらほしと協力して魚人島から逸れる位置に船体を引っ張ろうとするとか、そうした無茶(だけどそれができれば確かに魚人島は救われると思える)行動のなかで、「ダメだ…どうにもならない」と絶望して、最終的に海王類が助けてくれる、って流れの方がずっと自然だと思うわけです。

まぁ、「ジョイ・ボーイとの約束を果たせない」というセリフを入れるためには、「ノアを破壊する」描写を入れざるを得なかったんでしょうが、それにしても、もっとうまいやり方でまとめて欲しかった。

だって、ノアを破壊して魚人島を救うって言ってるのに、背景では「ストーリー上、ノアを完全に破壊し切ったらダメだから、ルフィには竜骨からは破壊させない」という御都合主義(魚人島を救ってるように見せつつも、ノアも完全に破壊させる気がないという意図)があからさまに見えてしまうんですもん。。

このシーン、本当に入念に練って決まった展開だったんですかね? 細部まで練りきれていないため、キャラクターたちの思考や感情ではなく、どうしても作者の意図によって強引に動かされているように感じてしまいます。こうした展開が、新世界編以降とにかく多い。そのせいでキャラクターの魅力や、物語の深みが削がれ、「つまらない」と評価されることが増えてしまっているのです。

まとめると、「魚人島編」は、サンジの鼻血シーンによって、ギャグとシリアスのバランスが崩壊した結果、最大の見せ場であるシリアスなクライマックスシーンでさえも茶番にしか見えなくなるという、最悪のエピソードになってしまいました。

ほんとにもう……おそらく最終章の(よく考察で言われている)ワンピースのクライマックスシーン(レッドラインを破壊➡︎魚人島も破壊➡︎ノアの方舟で脱出)につながる伏線が含まれた重要な章だったというのに……なんでこんなクソみたいな内容にしてしまったんだか……。当時の編集者には激しい怒りを感じます。

②キャラクターの「セリフ」が「説明文」となり、文字数が異常なまでに増える。

たとえば以下のシーン。

「サニー号は宝樹アダムより生まれた最強の船だ!!」って、あまりにも説明的すぎると思いませんか? 長期連載になりすぎて、過去の細かな設定を覚えていない読者に向けて、丁寧に説明しようとしているような作者の意図を感じ、物語に没入できません。「サニー号はこれくらじゃビクともしねェ!!」くらいが自然な「セリフ」ではないでしょうか。

また、「殺戮に飽きる事を知らず…」とか「船を狙って大海原を駆け巡る悪魔!!」「人間の敵!!」というのも、説明が過ぎます。

もっとひどいのは以下のページ。

新世界編以降はブルックがとにかくうるさくて、しゃべりすぎで、読者を苛立たせる存在になっています。ここでも「ゴースト船〜!!?」「おめがびびんじゃねェよ!!!」までならギャグとして受け入れられますが、その後の説明はもう読むのもめんどくさくなるくらい情報量が多い。

「アレは本物ですよ!!」とか「有名な船」とか「この世にあってはならない船」とか「それはもう数百年も前のお話」とか…指摘し出したらキリがないレベルで不要な情報が盛りだくさん。これ、編集者はちゃんと校正したんでしょうか? 重複情報や無駄な言い回しが多過ぎて、セリフとしても説明としても磨き上げられていないのが明らかです。

このように「新世界編」以降は、キャラが自分の意思で言葉を発するのではなく、尾田先生がキャラに「説明」させているように見えるシーンが大量にあります。

それによってキャラクターへの感情移入ができなくなり、キャラの魅力や存在感がどんどん薄れていってしまっているのです。

③吹き出しの占める割合が多く、絵が窮屈で見づらくなる。

これは以下のページを見ていただけば一目瞭然でしょう。

どのコマも少しの隙間がないくらい、異常なまでに吹き出しがつまっています。ページの半分がコマで占められているといっていいレベルです。

まるで絵を描くスペースを減らすために、無理やり吹き出しを敷き詰めているかのようです。

しかも、ほとんどのセリフはなくても問題ないものばかりで、そのキャラクターが言いそうにもない言葉を強引に言わせているような印象なんです。ルフィの「え? いったい何だそのもう一つの条件とは!? はたして!?」とか、違和感でしかないでしょ。ウソップの「塩分濃度がなんだって!?」もブルックの「歌いませんか!? ナミさん!!」も不要です。

なぜこんな無駄な言葉を残したまま校了させてしまうのか。。「なくても意味が通る言葉はカットする」という校正の基本ができていない。

こうした無駄なセリフをカットすれば、もっとテンポよく読めて、ストーリーの本筋や見せ場のシーンが際立つようになるのに、不要な情報を詰め込み過ぎて(というより編集者が引き算をしなさ過ぎて)メリハリがなく、ずーっと盛り上がりに欠ける展開が続いている(ように感じてしまう)のが、「新世界編」以降のワンピースです。

また「魚人島編」は敵キャラも中途半端でした。2年間の修行の成果としてルフィたちに圧倒させたいのか、苦戦させたいのかがわからず、バトルに緊張感も爽快感もありませんでした。

総じて、ワクワクドキドキする少年漫画・バトル漫画としてのセンスが感じられないエピソードとなってしまいました。「頂上戦争編」のワクワクはどこにいってしまったんでしょうか……これ本当に同じ作者が描いたんですか? と疑いたくなるレベルで、破格のつまらなさとなってしまっています。

次回は、「パンクハザード編」について考察します。